日本小児循環器学会雑誌
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動脈管薬の実験40年
門間 和夫
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2016 年 32 巻 4 号 p. 261-269

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抄録

動脈管は胎生期に特有の血管で出生後肺循環の確立と同時に速やかに閉鎖する.生後に閉鎖しないと動脈管開存症となる.新生児動脈管の生理的閉鎖機序は酸素によることが1950年までに確定し,1973年にはプロスタグランジンの動脈管拡張作用,1974年には非ステロイド性抗炎薬の動脈管収縮作用が発見された.未熟児動脈管開存症の閉鎖薬として1976年にインドメサシンが使われ,同年に私が始めた全身急速凍結法実験の結果から,その後イブプロフェン,アセトアミノフェンが使われてきた.1993年に糖尿病薬スルホニル尿素薬のグリベンクラミドが動脈管平滑筋KATPチャネルを介して兎胎仔動脈管切片を収縮することが中西敏雄教授により発見された.その第一世代ラスチノン,クロルプロパミドは1960年代初頭に妊娠糖尿病に使用され,高率の胎児死亡を生じた.私の実験では大量投与でラット胎仔動脈管は閉鎖するが,臨床量での動脈管収縮は軽度なので,妊娠糖尿病の経過中に解熱剤,鎮痛剤の併用で動脈管が閉鎖して胎児死亡を起こしたと推定される.グリベンクラミドの動脈管収縮作用はラット胎仔実験上用量依存性で,未熟胎仔の収縮は成熟胎仔よりやや弱い.臨床常用量(1 mg/kg)では胎仔動脈管内径は30%縮小し,大量投与(100 mg/kg)で胎仔動脈管は完全に閉鎖する.グリベンクラミドは親ラット保育中の生後1日のラット新生仔に大量胃内投与しても低血糖以外の副作用が全くないので,低血糖予防にブドウ糖を併用すればインドメサシン効果不十分例の未熟児動脈管閉鎖薬になるだろう.

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© 2016 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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