2022 年 12 巻 1 号 p. 1-6
本研究は,若年者と高齢者における心的時間測定課題を用いた運動イメージ想起能力の特徴を検討することを目的とした。対象は,若年者33名(平均年齢20.8±0.6歳),高齢者68名(平均年齢74.2±7.4歳)とし,Timed Up and Go test(TUG),心的時間測定課題のimagined Timed Up and Go test(iTUG)を開眼,閉眼それぞれ測定した。加えて,運動イメージ想起能力であるTUG とiTUG の時間的誤差(delta time)を開眼,閉眼それぞれ算出した。開眼,閉眼delta time を対応のあるt 検定で比較し,運動イメージの過大評価と過小評価の比率を母比率の検定で比較した。その結果,開眼と閉眼のdelta time は若年者で有意差を認めず,高齢者で開眼delta time が有意に増加していた。また,若年者,高齢者ともに,過大評価の比率が有意に高かった。これらの結果から,若年者は,開眼,閉眼の条件下で,運動イメージ想起能力が同程度である可能性が示唆された。一方,高齢者は,開眼で行うことで運動イメージ想起能力が低下する可能性が示唆された。