2015 年 2015 巻 25 号 p. 334-339
今日のインターネットは,ツールの高機能化と利用者の拡大を背景として,参加する人に大きな利便性を提供している.その反面,この仮想空間には新しくて大きなリスクも生じている.インターネットにおけるコミュニケーションのトラブルは,日本のほとんどの学生が体験している.日本の高等教育機関では情報リテラシー科目を設置して基本的なセキュリティの教育を行うなど,ネット上のリスクを軽減する取り組みを続けている.しかしトラブルの件数や内容を見る限り,十分な効果を上げているとは言いがたい.本研究では,大学生など,もっともネット上での多様なリスクに遭遇する危険性に直面する青年層に,より効果的なセキュリティ教育を提供するツールの開発に必要な基本的情報を探索する.中でも,ネット上のトラブルの心理社会的要因について重点的に検討する.本論では,日本の青年期女子が直面する今日的なインターネット利用上のトラブル経験の構造を調べるために実施した自己記入式の調査の結果を報告する.