Journal of UOEH
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ディプテレックス中毒
白石 悟井上 尚英村井 由之
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1982 年 4 巻 2 号 p. 177-183

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抄録

ディプテレックス(Dipterex : O, O-dimethyl 2, 2, 2-trichloro-1-hydroxyethyl phos-phonate)は, 現在世界中で広く用いられている有機燐系殺虫農薬である. 本剤は, パラチオンなどの強毒性有機燐剤の中毒事故が相次いだため低毒性で比較的安全な有機燐剤の1つとして開発された. しかし, 近年本剤による中毒例の報告が相次いでいる. 臨床的には, 次の特徴が見られる. (1)一時大量服用で, 意識障害を中心とする第1期, 無症状の第2期を経て, 服用後約2-3週間後に遅発性神経障害が出現する第3期の3つの臨床期を経過する. (2)遅発性神経障害は, 一般には末梢性多発神経炎型をとるが, 重症例では脊髄症状を伴う. (3)感覚障害に比較して運動障害の強い例が多い. 病理学的には軸索変性が主体である. これらの所見は, TOCP(triorthocresyl phosphate)中毒と極めて似ており, DipterexとTOCPは, 有機燐剤として類似の機序によって神経障害を惹起する可能性が考えられる.

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© 1982 産業医科大学
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