2004 年 26 巻 1 号 p. 59-74
在宅介護作業は, 重量の付加を伴う重心移動の繰り返しや中腰で行う作業が多く, 「職場における腰痛予防対策指針」で指摘されている重症心身障害児施設における介護作業に匹敵する. 本研究では, 介護保険制度の開始以後, 高齢者介護の実際を担っているホームヘルパーの腰痛の実態を調査し, 腰痛と労働衛生教育の普及程度との関連を明らかにした. その結果, ホームヘルパーの約半数はホームヘルパー養成講座で腰痛予防知識を学習しているが, 軽度の腰痛症状を呈する人が多く, 継続的な学習の必要性を感じていることから, 腰痛症状悪化予防のための労働衛生教育の重要性は高いと言える. しかし, ホームヘルパーの雇用形態はパートタイム勤務が6割以上を占め, 訪問介護先に直行・直帰の勤務形態をとることが多いことから, 職場での集団教育は実用的ではない. これらの結果に基づき, 介護の内容と作業姿勢・動作の関係, 腰痛症予防の知識に関して簡便かつ効率的に学習できる自己学習教材を開発した.