力学的負荷の消失が骨量減少を引き起こし, その後に再荷重すると, いったん減少した骨量が回復することが知られている. 力学的負荷の要請に呼応して, 骨量と骨構造は変化する. 骨組織における力学的刺激の感知から骨形成と骨吸収反応に至る過程におけるシグナル伝達には, 未だ不明な点が多い. 力学的負荷の増加に応答する正の骨量調節因子として一酸化窒素が, 力学的負荷の減少に応答する負の骨量調節因子としてp53が重要な役割を担っている. 力学的負荷の増減による骨量の調節機構を明らかにすることは, 宇宙飛行や長期臥床などによる微小重力環境への適応を模索する点で意義があるばかりか, 炎症性および代謝性骨疾患の病態解明の有力な手がかりになると思われる.