2022 年 25 巻 3 号 p. 225-239
環境中にゴミとして流出した一部のプラスチック類は,海洋中で力学的・光化学的作用により崩壊・微細化し,ミリメートル(mm)からマイクロメートル(μm)スケール以下の粒子となり海洋中に蓄積することが明らかとなっており,所謂,海洋マイクロプラスチック問題として社会的関心事となっている。一方,室内には多くのマイクロプラスチックの発生源となるプラスチック類製品が多様に存在し,室内環境中でのマイクロプラスチック汚染の可能性や健康影響への懸念が完全には否定できないにも関わらず,現時点では十分な議論が行われておらず,全国規模の実態調査の実績も無い。本報を含む一連の研究は,室内環境中(空気中もしくはダスト中)に存在するマイクロプラスチックの調査法(サンプリング法),ならびに定性・定量分析法を確立した上で,全国規模の調査を行うことで室内マイクロプラスチック汚染問題の実態把握を行うことを最終目標とする。特に本報はその第一歩として,既存のハウスダストサンプリング法と海洋マイクロプラスチック成分の分析法を組み合わせることで,室内環境を対象としたマイクロプラスチック調査への適用可能性に関して基礎的な検討を行った結果を報告する。