日本鼻科学会会誌
Online ISSN : 1883-7077
Print ISSN : 0910-9153
ISSN-L : 0910-9153
原著
Endoscopic Modified Lothrop Procedure術後前頭洞口狭窄の誘因と予防法の検討
上田 航毅小林 正佳竹内 万彦
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 62 巻 4 号 p. 619-624

詳細
抄録

Endoscopic Modified Lothrop Procedure(EMLP; Draf type III)は内視鏡下に広く骨削除を行い,前頭洞を単洞化する手術である。最大の問題点は,開大した前頭洞口が狭窄することであるが,その誘因は十分に解明されていない。そこで今回,当施設で2008年9月から2021年10月までにEMLPを施行した術後前頭洞口所見の長期経過とその誘因を検討した。狭窄予防策として術中に可能な限りの骨削除を施行した。また,粘膜腫脹による癒着の抑制と抗炎症作用を目的として経口ステロイドとキチン製材での創部パッキングを施行した例と,しなかった例を比較検討した。全症例数は70例で,平均年齢は59歳,術後の平均観察期間は53ヵ月であった。狭窄例は11例(16%)で,そのうち閉塞例は3例(4%)であった。内視鏡下で明らかな狭窄が認められはじめた日までの平均日数は98日であった。前頭洞口狭窄は前頭洞炎と過去に鼻手術歴のある例において多かった。多変量解析では前頭洞炎のみ有意な因子であった。経口ステロイド投与例で有意に狭窄例が多かったが,これはこの中に前頭洞炎例を多く含むことによるバイアスと考えられた。また,キチン製材によるパッキング例では,施行例と非施行例との間に有意差を認めなかった。前頭洞口閉塞例に対しては外来で再開放してステント留置(2例)または入院再手術(1例)を施行した。今回の検討により,EMLP後の前頭洞口狭窄の危険因子は,前頭洞炎と過去の手術歴であることがわかった。経口ステロイド投与とキチン製材によるパッキングは今回の投与期間,留置期間においては有効ではなく,今後有効な保存的な狭窄予防方法の考案が望まれる。

著者関連情報
© 2023 日本鼻科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top