日本鼻科学会会誌
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原著
術前の抜歯が歯性上顎洞炎の手術に与える影響
阪上 剛成尾 一彦
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2023 年 62 巻 2 号 p. 317-321

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抄録

歯性上顎洞炎は治療方針に一定の基準や指針はない。歯科治療が不十分な状態で内視鏡下鼻副鼻腔手術(以下,ESS)を行えば,炎症下の操作のため手術に難渋することがあり,また,病因が残存しているため術後再発も懸念される。今回,根尖病巣が原因となる歯性上顎洞炎に対して,ESS施行前に原因歯を抜歯した症例(6例)と抜歯以外の歯科治療を行った症例(10例)について,手術時間,術中出血量,術後再発について後ろ向きに検討を行った。手術時間,出血量,術後再発のいずれも統計学的に有意差がなかった。安全な手術遂行のために必ずしも抜歯は必要ではなく,原因歯の保存も選択肢の一つになる可能性がある。抜歯の有無に関わらず上顎洞炎は再発する可能性があるためESS後も鼻副鼻腔の経過観察は必要である。歯性上顎洞炎は歯科と耳鼻咽喉科の境界領域の疾患であるため,密接に連携することが適切な治療のために重要である。

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