種子を用いない植生マット工の植生遷移と,自然回復の効果を明らかにすることを目的として,5個所の施工地に7個の調査区を設け,最長7年間の植生調査を継続的に実施した。各調査区は立地により異なった植生遷移を示しつつ,最大57カ月後までに,全体の植被率が50%を越えた。木本の優占度(DT)もまた全調査区で調査期間を通じて増加した。生態学的な指標を用いて自然回復の過程を評価したところ,5調査区で出現種数の増加による自然回復の進行が認められたが,多様度指数(H’),周辺植生との類似度(QS)と遷移度(DS)は,全調査区で継続的増加を示さなかった。施工3~7年後の時点では,周辺植生との質的相違は大きく,自然回復の途上にあると言える。