日本総合健診医学会誌
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人間ドックにおける前立腺癌スクリーニング検査についての検討
平野 久美子赤堀 亜矢子是枝 直子堀内 真由美円岡 早苗杉山 美和子鈴木 晶子渡辺 かほる諸戸 敬子斉藤 雄二山澤 〓宏
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キーワード: 前立腺癌
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1999 年 26 巻 4 号 p. 385-389

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抄録

人間ドック受診者 (男性) 4, 598名を対象に前立腺検査の現状と検査異常者の追跡調査および今後の問題点について検討した。
検査方法は前立腺性酸性ホスファターゼprostatic acid phosphatase (PAP) は比色法, 前立腺特異抗原prostate specific antigen (PSA) については (AbビーズPSA‘栄研’法) と依頼先医療機関の方法 (マーキット法) との比較検討を行った。
検査の異常率はPAPO.3%, 一方PSAでは10.3%であった。PAPおよびPSAとの相関関係は認められなかった。PSAの異常率は加齢現象が認められた。スクリーニング検査で異常値を示した人は, 専門医に紹介しているが, 再検の結果でPSAの測定値に差が認められたため, 検査方法の比較検討を行った。その結果, 良好な相関関係を示したが, 測定値は栄研法 (1.6±1.5) , マーキット法 (0.9±0.6) で明らかな差が認められた。
前立腺検査異常者は108名で, そのうち, 追跡調査ができたのは56名 (52%) であった。追跡できた56名中, 有所見者数は9例で, その内訳は前立腺肥大症5例, 前立腺癌の疑い2例, 前立腺癌2例であった。
前立腺癌と診断された2症例のPAPの過去データはすべて正常を示しており, その2例ともがPSAの検査により発見されたケースで, PSAの有用性が認められた。前立腺癌の発見率はPSA受検者の0.19%, PSA検査異常者の1.85%であった。以上のことから, PAPの有用性は低く, 今後PSA単独の実施が望ましいと考えられた。その場合, 対象者の年齢は50歳以上と設定するのが妥当と思われる。
また, PSA検査データの交換には検査方法や基準値を明記する必要性がある。
今後, 依頼先の医療機関との連携の強化, 内部のフォローアップ体制の充実を計ることなどにより, 前立腺癌の発見率はさらに上昇するものと考えられた。

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