2016 年 43 巻 4 号 p. 352-359
体外循環中のマンニトール持続投与の報告は少なく、術後急性期の臨床効果は明らかではない。今回我々は、低侵襲心臓手術中のマンニトールの持続投与が周術期の水分バランスおよび酸素化にどう影響するかを検討した。対象は2012年11月から2014年12月までに右肋間開胸で手術した体外循環症例84例のうち、2013年9月以降のマンニトール持続投与群(C群)39例と、それ以前の非持続投与群(nonC群)45例を比較検討した。尿量は術中から術後12時間まで、いずれにおいても2群間で有意差は認められなかった。水分バランス増加率について体外循環中に有意差を認めなかったが、術中および術後12時間にかけてC群で有意に低下した。2群を更に腎機能別に分けて評価した結果、腎機能低下群で術後水分バランス増加率は上昇するが、C群で水分バランス増加率が抑制される傾向にあった。また、術後P/F比は両群で有意差を認めなかったが、術後P/F比は水分バランス増加率に有意に相関した。マンニトールの体外循環中持続投与は、低侵襲心臓手術における水分バランスを抑制し、術後の呼吸器合併症を予防できる可能性が示唆された。