体外循環技術
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人工心肺を用いた体外循環がトリプトファン代謝に及ぼす影響
杉森 美幸伊藤 康宏石川 隆志山内 章弘海江田 章豊崎 正人三澤 健治榊原 未和山本 賢石田 沙織日比谷 信井平 勝渡邉 浩次山下 満服部 良信奥野 海良人柴田 克己
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2007 年 34 巻 1 号 p. 7-9

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抄録

【要旨】必須アミノ酸であるトリプトファンの肝臓での代謝に注目し,体外循環がトリプトファンの主要な代謝経路であるキヌレニン経路にどのような影響を及ぼすのか検討した。体外循環を用いた開心術前後の血漿および部分尿を採取した。トリプトファンとその初期の代謝産物であるキヌレニンの血中濃度,肝臓のみでトリプトファンから産生されるキヌレン酸,アンスラニル酸,キサンツレン酸,3-ヒドロキシアンスラニル酸およびキノリン酸の尿中濃度をそれぞれの高速液体クロマトグラフィー法で測定した。その結果,血中トリプトファン,キヌレニンおよび尿中キヌレン酸とキサンツレン酸は手術前後で差はなかったが,尿中のアンスラニル酸と3-ヒドロキシアンスラニル酸は有意に増加していた。これらの結果から,体外循環によって肝臓でのトリプトファン代謝系が亢進していることが示された。また,これらの物質は生理活性が強いことから,生体内での過剰な蓄積は臓器組織に障害をもたらす可能性がある。したがって,この結果は体外循環中の腎機能の維持や除水の重要性を示唆している。

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© 日本体外循環技術医学会
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