特殊教育学研究
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聾学校小学部第3学年児童の分数導入単元における授業展開過程について
井坂 行男
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2008 年 46 巻 3 号 p. 175-191

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抄録

本研究は、聾学校小学部第3学年児童における分数の導入単元について、実際の授業記録をもとに、授業展開を分節に分けて検討したものである。その結果、実際の授業の1単位時間の平均分節数は5.2分節であった。また、授業時間は標準時数に比較して4.6単位時間分の加配が認められた。第1・第3小単元では授業時間の加配が認められ、児童の「概念的混乱」「概念応用による混乱」が生じていた。これらの小単元では分数の意味や分数の構成的内容が扱われていた。児童にとっては既有知識の整数の世界に新たな分数の知識を取り入れるための学習内容であったため、より多くの時間を要したと考えられる。また、「具体的操作」の活用によって、児童の「概念の活性化」が促されていた。さらに、全13時間の中では9時間目に分数の構成、系列、大小比較等の分数概念全体の理解が促進されたことから、最も重要な時間であったと思われた。また、児童の学習内容の理解はほぼ目標レベルまで達成されていた。しかし、評価問題においては言語的な課題に基づく誤りと「長さ」を扱う問題に誤りが認められた。

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© 2008 日本特殊教育学会
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