2007 年 45 巻 4 号 p. 217-227
本研究では、自閉症児に対し、エコロジカルなアセスメントを適用した評価を行い、指導を実施することによって、コミュニケーションを改善するための指導に有用な評価について検討した。環境と子どもとのやりとりを評価するためにエコロジカルなアセスメントを改良して適用し、一人の子どもの日常の活動についてみられるコミュニケーションを3つの下位領域に分けて評価を行うために、インタビューと行動観察を試みた。(A)意思を伝える行動、(B)援助者の指示を理解して動こうとする行動、(C)ルールの理解。本研究の事例では評価の結果、Bの領域に焦点を当てることとしたうえで、援助者の指示を理解して動こうとする際に必要とされる6つの行動の獲得を目的とした指導を、約3か月間行った。その結果、対象児は家族の支援をより理解できるようになり、対象児がより支援を受けやすくなったことにより、生活全体における援助者の抱える困難さが軽減した。以上のことから、生活に根ざしたコミュニケーションの改善を目的とした指導において、指導目標となる領域を決定するためにエコロジカルなアセスメントは有用であることが示唆された。