1992 年 30 巻 3 号 p. 67-73
目の前の子どもの日々の行動を整理・図式化し、その子どもがかかえる問題を明確にし、指導目標と方法を策定することについて、ひとりの脳性まひ児に対する実践を通して検討した。本児の行動の整理・図式化から、本児のかかえる最大の問題が「環境に対する受身的な態度」であると判断した。そこで、環境に働きかける手段の充実のために、第1に、ことばの拡大をねらい、文字に絵を重ねあわせた刺激を使用する絵文字指導と身振りサインの指導を行った。第2に、積極的に環境に働きかける意識を育てるために、積極的に褒める状況をつくるといった「わがまま推進指導」を行った。指導の結果、本児の行動が着実に変容していった。行動を整理・図式化することで、指導目標と方法が明確になることを確認し、最後に現場の時間の余裕を積極的に利用するための工夫についてのひとつの指針を明確にした。