1982 年 20 巻 2 号 p. 1-9
精神薄弱児の準備的構えの特性のうち、言語の行動調整機能と関連した側面として、反応信号(RS)に対する選択的運動反応の形成および先行教示による用意信号(WS)の効果の発現という二段階を検討した。対象は、中・軽度精神薄弱児(8〜15歳)と健常児(4〜9歳)とした。RSに先立ちWSを呈示する条件としない条件に加えて、先行呈示してもWSの役割りを教示しない条件を設定した。RSに対する選択的運動反応が不十分であるもののうち、WSの先行教示が効果をもたずRTの増大した例が、一部の精神薄弱児や年少健常児で見出された。選択的運動反応が十分形成されたものでは、WS教示に伴いRTの増大を示す例はみられなかった。準備的構えを随意に調整する段階に先立ち、用意という教示の有効な段階、さらにはRSに対する選択的運動反応が十分に形成される段階のあることが明らかとなり、精神薄弱児にはこのような前段階にとどまる例が認められた。