日本病院総合診療医学会雑誌
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症例報告
メコバラミンの試験的投与で軽快した血清ビタミン B12 値が正常の悪性貧血
國友 耕太郎辻 隆宏清川 哲志
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2019 年 15 巻 4 号 p. 385-390

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抄録

大球性貧血を主訴に当院を受診した 78 歳女性。血球像では,過分葉好中球を認め,骨髄検査では,巨赤芽球様変化を認めた。生化学検査では,LDHが上昇し,ハプトグロビンが著明に低下していたが,直接,間接クームス試験は陰性であった。上部消化管内視鏡検査では,萎縮性胃炎を指摘された。血清ビタミンB12 および葉酸値は正常値であった。骨髄異形成症候群が鑑別にあがったが,臨床症状と検査所見から,悪性貧血が強く疑われた。試験的にメコバラミンを投与したところ,投与開始 2 週間後の血液検査で,大球性貧血は改善した。抗内因子抗体が陽性であったことから,最終的に悪性貧血と診断した。血清ビタミンB12 の偽正常ならび偽高値の悪性貧血は,これまで 11 例報告されており,抗内因子抗体が,ビタミンB12 の自動測定系に影響を及ぼしていることが推察されている。臨床症状や検査所見から,悪性貧血が疑われる場合は,空腹時総ホモシステインの測定か,メコバラミンの経口投与が診断的治療として有用と考える。

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