日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
症例報告
肝膿瘍の無症状期から消褪期までの経時的画像変化
石川 詩織高橋 雄介真壁 武一長谷川 修
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 15 巻 4 号 p. 380-384

詳細
抄録

無症状期にCTで肝内高濃度腫瘤として表現され,2 ヵ月後の症状発現時にはさらに大きな典型的低濃度腫瘤となった肝膿瘍例を経験した。急性心不全で入院した 93 歳女性の腹部単純CTで,肝S6 に 5 cm大でやや高濃度を呈する境界明瞭な腫瘤が偶発的に認められた。腫瘍マーカーの上昇も,発熱や炎症所見もみられず,超音波検査で高エコーを確認したのみで,外来で経過観察とした。2 ヵ月後に,発熱と右季肋部痛のため独歩で来院した。CTで肝内腫瘤は前回より拡大し,境界明瞭かつ低濃度の膿瘍像を呈した。抗菌薬投与とドレナージで治療し,退院後 1 年後には,縮小し器質化した低濃度腫瘤像となった。一般に肝膿瘍は,単純CTでは肝実質より低濃度を示し,辺縁部がやや高濃度に描出される。しかし,肝膿瘍のごく初期や治療後などでは充実性腫瘤像を呈することがある。本例でも当初この形をとり,診断遅延につながった。肝膿瘍が考慮される場合には,臨床 症状,画像・血液検査所見を含めて,注意深い経過追跡が重要であろう。

著者関連情報
© 2019 日本病院総合診療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top