行動リハビリテーション
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Print ISSN : 2186-6449
重度片麻痺と全失語を呈した症例に対するプロンプトフェイディング法と時間遅延法を併用したトイレ動作練習の効果についての検討
中島 秀太加藤 宗規辛 秀雄
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2014 年 3 巻 p. 62-66

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抄録

重度片麻痺と全失語を呈した一症例に対し車椅子とトイレ動作(移乗と立位)の介入効果について検討した.トイレ介助ができない要因として,移乗動作を行うことができないことが主因であった.①手すりの適切な位置を把持する,②把持したまま立ち上がる,そして排泄後,便座から車椅子への移乗の際に③車椅子の肘掛けの適切な位置を把持する,④立ち上がる,の4つの行動要素ができないことが観察より挙げられた.第12病日から第14病日においてもトイレ介助は2 人介助でも実施不可能であり,トイレ介助のための新たな介入方法として2段階の介入方法を計画した.介入1期では,適切な把持位置に赤色のビニルテープを貼り(視覚的プロンプトを設置),さらに時間遅延法を用い,指示なしで可能の6点,不可能0点の7段階として経過を記録した.介入2期ではビニルテープを剥がし(プロンプトフェイディング),介入1期と同様に時間遅延法による経過を記録した.手すりや車椅子の肘掛けの把持動作が3日連続5点以上で可能となった段階で介入1期を終了し,介入2期に移行した.介入前の3日間は5-5-6点であったが,介入1期は14-10-16-14-16点と5日間で達成し,介入2は16点以上で6日間経過した.なお,介入2期終了時点での運動機能や言語機能は改善がみられなかった.プロンプトフェイディング法と時間遅延法を併用したトイレ動作の運動学習は,重度片麻痺と全失語を呈した症例のトイレ動作学習に有効であったと考えられた.

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© 2014 行動リハビリテーション研究会
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