日本釀造協會雜誌
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麹菌種混合の効果
村上 英也矢野 裕通
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1957 年 52 巻 8 号 p. 645-643

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抄録

先に醸造試験所に於て単一麹菌株Single Canstant Strainを用いて麹を造り, 出麹を冷温に放置後起る褐変化が一般酒造の褐変化とやや異り非常に速かに生起しその着色度も亦2倍以上濃厚であることを指摘し, この理由は一般酒造工場で使用する種麹中には着色性の強い麹菌 (いわゆる栗香を生産する菌株はすべてそうである) の外にその弱い麹菌が混合されている (実際上そうである) ため褐変力が相殺される結果であると推論し, 之により逆にこれら性質の異る麹菌を各一定量ずつ混合使用することにより製麹に於ける菌変性の一端をうかがうことが出来るであろうことを暗示した。現に微生物の変異の研究にその色素生産性Tyrosinase activityの強弱を導入する方法は最近Neurosporaのwildtype, matingtypeの識別に利用されるなどかなり広く用いられているのである。本報ではこの考えに基ずき変異研究の問題としてではなくて菌種混合による着色性の変化を知るため着色性の強い麹菌とその弱い麹菌を用い25, 30, 36℃ の各温度に於て蒸米上にフラスコ培養を行つた結果出麹の着色性はこれら菌株の混合量比に殆ど比例することが明らかになり, 菌種の配合によつて着色を任意にcontrolすることが出来種麹に於ける菌種配合に根拠を見出しその他着色は培養温度の高い場合に大であること等を知つた。

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