木材保存
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野外防かび効力試験方法による新規防かび剤の効力
角田 邦夫
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1990 年 16 巻 3 号 p. 130-139

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抄録

野外防かび効力試験による評価は,防かび剤の実用化に当たって不可欠であるが,標準的な方法が確立されていない。そこで,野外防かび効力試験方法を企画し,その方法による防かび剤の効力持続性の査定を5種の木材用防かび剤を用いて行った。
製材直後のアカマツ材(10×2×100cm)を防かび処理薬液に30秒間浸漬した後,屋外に一条件30枚の試験材を桟木を挿入しながら5列6段に平積した。製材及び防かび処理は1988年6月6日に実施し,その後1カ年にわたって所定期間毎に各試験材を肉眼観察して,防かび効力持続性を評価した。
新規防かび剤である2-(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール(TCMTB)+メチレンビスチオシアネート(MBT)(20%a.i.),TCMTB+3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)(10%a.i.),4-クロロフェニル-3-ヨードプロパルギルホルマール(IF-1000)+2-(4-チアゾリル)ベンツイミダゾール(TBZ)(6%a.i.)を,100倍と200倍に希釈して防かび処理に供したところ,従来から市販されている2,4,6-トリクロロフェノール(TCP)ナトリウム塩(40%a.i.)やTCPを主剤とする防かび剤(28%a.i.)の60倍希釈と比較して,室内試験と同様に野外試験でも防かび性能が優れていることが実証された。特に,TCMTB+MBTの混合薬剤は,初期の防かび効果も高く,6カ月後でもかなりの防かび性を保持していた。TCMTB+IPBC,IF-1000+TBZも3カ月以内の短期間であれば,高い防かび効力を維持できたが,6カ月後になると防かび性は満足できるレベルを下回っていた。在来市販品は3カ月目の観察時に,防かび効力がすでにかなり低下してしまっており,それ以後は無処理と大差がなかった。
今回提案した野外防かび効力試験方法は,実施が容易であり,薬剤間の効力や効力持続性の比較が可能であったことから,標準試験法として検討される価値があろう。

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