頭頸部腫瘍
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同時多重癌治療上の問題点
予後から見た問題提起
永原 國彦山根 康隆山本 一宏南 八王塚本 哲也
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1993 年 19 巻 3 号 p. 325-329

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抄録

他領域の癌に比して治療成績の良い頭頸部癌の治癒率を, 一層向上させるために残された重要な問題に遠隔転移と多重癌の制御がある。そこで過去10年間に治癒切除を含む治療を施行した悪性リンパ腫を除く頭頸部癌344症例について検討を加えたところ多重癌は7.9%に認めた。これを扁平癌上皮癌175症例に限れば10.9%の頻度であり, なかでも中下咽頭・頸部食道癌が54例中の12例 (22%) と最も高率であった。また, 口腔, 咽頭, 食道, 胃, 喉頭, 肺など多重癌の発生し易い multicentric zone 内に出現した場合の予後は明らかに悪い。zone 外の多重癌16名においては3名しか死亡していないのに対して, zone 内では11名中8名が既に遠隔転移を主因として死亡している。また, 消化器系に出たものや, 同時癌の予後は悪い。異時癌12名中では4名が死亡し8名が生存中であるのに対して, 同時癌15名では既に大半の9名が死亡している。予後をより改善するためには, multicentric zone 内の多重癌, 特に上部消化管における合併の検索が大切で, これにはファイバー内視鏡検査が必須である。また, 術後数年間に亘る系統的かつ強力な予防的免疫科学療法の効果が期待される。

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© 日本頭頸部癌学会
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