舌全摘,亜全摘後(喉頭温存)に水を誤嚥なく飲めた19例に対して嚥下造影を行い,嚥下の代償的な機能を観察した。口部舌が隆起型の症例は造影剤の口腔内保持が可能であったが,舌の下降ができない症例は咽頭への送り込みで頸椎を強く後屈する必要があった。口部舌が平坦な症例であっても舌根部にボリュームがあれば中咽頭での造影剤の保持が可能で,頸椎を後屈することなく咽頭に送り込み,嚥下圧も獲得できていた。食塊の保持や嚥下圧の発生には舌根の昇降運動が必要になるが,舌根の挙上には口蓋舌筋や茎突舌筋を含む中咽頭側壁の温存が重要と思われた。少なくとも片側の顎二腹筋後腹や茎突舌骨筋が温存されていれば舌骨喉頭挙上(前方固定)を行わなくても誤嚥は見られず,喉頭の挙上運動は可能であった。再建においては,舌根の咽頭側にボリュームを持たせ,咽頭後壁に接するように再建することが重要であった。長期経過例では,咽頭の知覚や反射の回復により,輪状咽頭筋切断を行わなくても上部食道括約筋の円滑な開大など良好な嚥下が観察された。