原発巣のステージは低いが頸部リンパ節転移をきたした中咽頭・下咽頭・喉頭癌症例に対し,頸部に対しては頸部郭清を行い,原発巣に対しては照射で臓器を温存して加療した症例について臨床的に検討した。疾患の内訳は中咽頭癌10例,下咽頭癌3例,喉頭癌3例の計16例であった。T分類はT1とT2の合計が12例(75%)と原発巣は早期の症例が選択され,N分類はN2とN3の合計が15例(94%)と頸部リンパ節は進行した症例が選択されていた。頸部は全例で制御され,原発巣は全例で初回治療終了時はCRに達していた。中咽頭癌の1例が局所再発により死亡,下咽頭癌の1例が重複した肺癌により死亡した。原発巣は小さいが頸部リンパ節転移のある症例の治療においては両者の治療のバランスに苦慮することがある。本治療法は,今回の検討では症例が慎重に選択されていたため良好な成績であったが,原発巣が小さく頸部リンパ節転移のある症例の治療においては選択肢として検討すべき方法と思われた。