日本泌尿器科學會雑誌
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超音波断層法により発見された腎細胞癌25症例の検討
麦谷 荘一関口 浩金子 佳雄秋山 敏一杉山 高鈴木 俊秀増田 宏昭田島 惇阿曽 佳郎
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1987 年 78 巻 11 号 p. 1933-1939

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抄録

1979年1月より1986年11月までに, 当院において腹部疾患スクリーニングを目的として, 腹部超音波断層法を計41,983人に施行した. その結果発見された腎細胞癌 (以下腎癌) 25症例を対象として検討した. これらの腎癌25症例について, 超音波断層法を受けるに至った主訴により, 以下の3群に分類した. すなわち腎癌の三大症状のいずれかを主訴とするものを尿路症状群, 尿路外症状あるいは転移症状を主訴とするものを尿路外症状群, 無症状で全く偶然に発見されたものを無症状群とした.
尿路症状群8例, 尿路外症状群12例, 無症状群5例であった. 尿路症状群の4例を除く21例は他科を受診し, 超音波断層法により発見されたものであった. 25例のうち血尿を認めなかったものは18例 (72%), IVPにて異常所見を認めなかったものは3例 (12%) であり, 腎癌の早期発見の手段として超音波断層法の有用性があらためて確認された. 無症状群の腫瘍径は他の2群に比し有意に小さく, また stage は低く, 予後も良好であった. 超音波断層法は腎癌早期発見に非常に有用であると思われた. 腎癌の早期診断, 治療成績向上のため, 尿路外症状にも注目し, 超音波断層法の必要性を痛感した. 今後腎癌の早期発見のために, 超音波断層法が集団検診を含め各領域において, 積極的に用いられることが望まれる.

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