日本泌尿器科學會雑誌
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マウス実験的上行性腎盂腎炎における尿中および腎組織内 antibody-coated bacteria の観察
出口 隆
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1986 年 77 巻 5 号 p. 728-736

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抄録

E. coli を用いたマウス実験的上行性腎盂腎炎において, 尿中および腎組織内の antibody-coated bacteria (ACB) の観察を酵素抗体法を用いておこない以下の結論を得た.
1. 感染1日後より腎においては, 組織学的に細菌が観察されたが, 主に尿細管腔内において集塊を形成する細菌であった. 10日後の腎組織においては, 組織学的に細菌を認めなかった.
2. 尿中ACBは3日後より認められ, 腎組織内ACBは5日後に認められた. 腎組織内ACB陽性例はすべて尿中ACBは陽性であった. したがって, 腎に明らかな炎症が存在する場合には, 尿中ACBが腎由来である可能性が示唆された.
3. 腎組織内ACBは, 尿細管腔内に集塊を形成する細菌に認められた. 免疫グロブリンは, また, 尿細管上皮内, 尿細管腔内, 尿細管間質に認められたが, 感染7日目までの腎においては, 免疫グロブリンを含有する細菌は認められず, したがって, 7日目までの腎内ACBについては, 腎組織内において産生された抗体が細菌を被覆する可能性を支持する結果は得られなかった.
4. 免疫電顕によるACBの観察では抗体は細菌の外膜に沿って局在し, IgG, IgM, IgAによる局在の差は認めなかった. これらの観察により, ACBの抗体がO抗原に対する抗体であることが形態学的にも認められた.

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