日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
腎細胞癌の術後転移に関する臨床および病理組織学的検討
大西 哲郎町田 豊平増田 富士男荒井 由和仲田 浄治郎鈴木 正泰
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1984 年 75 巻 4 号 p. 681-687

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抄録

1957年1月より, 1977年12月までの21年間に腎摘除術を施行した腎細胞癌のうち, stage 3 以下の138症例について, 手術後5年以上経て遠隔転移を認めない28例 (第I群) と, 術後転移を認めた33例 (第II群) の2群間で, 臨床的および病理組織学的特徴について比較検討した. その結果, 罹患年齢, 性別, 患側, 発症より来院までの期間および初発症状について, 2群間で差はなかった. また, 体重減少, 貧血, Al-P上昇例は, 第I群に比較して, 第II群にその陽性例が多くみられたが, 統計的解析では差が認められなかった. 術後転移時期として, 肺, 肝, 脳, 骨, リンパ節の順に長くなる傾向であった. 摘出標本の大きさに関して, 第II群が第I群に比較して, 腎重量は重く, 腫瘍径も長い傾向であったが有意差はみられなかった.
第I群では, 第II群に比して, low grade, low stage が多く認められた. さらに, 第I群の low stage 中, high grade の占める率は, 第II群のそれに比較して極めて低く, また, stage 3についても, 第I群はすべて low grade であるのに対し, 第II群は, high grade が大半を占めた. つまり, 腎細胞癌の術後転移に関して, stage 4を除くすべての stage にわたって grade が重要な因子と考えられた.

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