日本泌尿器科學會雑誌
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膀胱癌診断における尿中ヒアルロン酸定量の意義
II 膀胱癌患者におけるヒアルロン酸尿症
馬場 志郎
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1983 年 74 巻 8 号 p. 1362-1369

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抄録

健康成人19名を対照群とし, 上部尿路結石患者11名, 腎癌患者6名および膀胱癌患者23名の24時間尿中酸性ムコ多糖体 (GAG) 総排泄量, ヒアルロン酸 (HA) 排泄量を測定し対照群と比較検討した. 尿中GAG総量は carbazole 反応によりウロン酸値をもつて表現し, 尿中HAは specific radioassay により測定した. 対照群のGAG総量は9.2±0.8mg/day (mean±SEM) でHA排泄量は460±60μg/day (mean±SEM) であつた. 対照群のHA排泄量の上限を900μg/day (mean+2SD) とし, この値以上のHA排泄量を認めた場合「ヒアルロン酸尿症」と定義した. 尿路結石患者では尿中GAG総量は対照群と比較し有意に (p<0.05) 高値を示したがヒアルロン酸尿症を呈したものはなかつた. また腎癌患者では尿中GAG総量, HA量のいずれも対照群と比べ有意差は認めらず tumor stage T4で骨に多発性転移巣を伴う1例にヒアルロン酸尿症がみられた. 膀胱癌では尿中GAG総量, HA排泄量ともに対照群より有意に増加していた (p<0.05). 尿中HA排泄量は膀胱癌でも grade 0 & I で単発性乳頭状腫瘍では対照群と有意差はなく grade II 以上で高率にヒアルロン酸尿症を認めた. また low stage でもヒアルロン酸尿症を呈する腫瘍は臨床的に余後が悪いことも示された. 膀胱腫瘍の切除によりヒアルロン酸尿症は消失し, また腫瘍の再発に伴つて出現した. 以上の結果から尿中HAが膀胱癌の悪性度診断に, また治療後の monitoring に腫瘍マーカーとして臨床的に有用であることを示した.

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