1983 年 74 巻 5 号 p. 840-846
腎動脈撮影で hypovascular または avascular pattern を呈する腎細胞癌は, 比較的稀な疾患とされているが, 臨床経過および病理組織学的に興味ある特徴を有している. 今回我々は, 1972年より1980年までの9年間に腎摘除術を施行した腎細胞癌74例のうち, hypovascular または avascular pattern を呈した5症例の臨床的特徴および病理組織像について検討した.
5症例の平均罹患年齢は64.2歳で, 性別では男子2例, 女子3例であり, 血尿 (肉眼的および顕徴鏡的) を4例に認めた. また, clinical stage では, stage 1が4例 (80%) と, low stage が多くみられた.
一方, hypovascular または avascular な腎細胞癌の病理組織像では, alveolar pattern がまつたく認められず, 逆に anaplastic pattern が多くみられ, かつ本邦では, 欧米の報告に反し, papillary pattern が少なかつた. また, vascularity が低いことと, cell type, grade の相関はみられなかつた.
5症例の転帰では, 術後他病死した3例を除いた2例は, 術後1年11カ月, 6年経過した現在生存しているが, 本邦報告例の予後は, 欧米のそれと比較して必ずしも良くない傾向であつた.