日本泌尿器科學會雑誌
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ラット精巣における精細管内細胞の膜電位変化と細胞内染色
山本 雅憲三宅 弘治三矢 英輔北村 裕和山田 和順
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1982 年 73 巻 9 号 p. 1116-1122

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抄録

微小穿刺法の手技は腎生理学の分野で発展してきた. 今回我々はその手技を男性生殖器に応用し, 精細管内細胞に関するより詳しい情報を得るために, ラットより分離した精細管を用いて, 精細管内細胞の膜電位を, 微小電極法により測定した. ウィスター系ラットを用い, 屠殺後, 1本の精細管を分離し, これを95% O2, 5% CO2で飽和した実験液槽に固定し, 実体顕微鏡下に, マイクロマニピュレーターを用いて, 微小電極を刺入した. 刺入した細胞を組織化学的に同定するために, ペルオキシダーゼを混じた3MKClを電解液として用いた. 膜電位記録は, WPI社M707型増幅器を通して, ペンレコーダーで行つた. 電位記録後, マイクロイオントフォレーシスにより, 電解液を細胞内へ注入した. ついで, グルタールアルデヒドで固定し, DAB (ジアミノベンチジン) で発色させ, オスミウムで後固定後, エタノール系列で脱水し, Epon 812に包埋し, 3μの連続切片を作製した. その結果, (1) 精細管内細胞より記録された膜電位は, -30.49±7.41mVであり, これは神経や筋細胞のような興奮性細胞に較べると低い値であつた. (2) 位相性の電位変化が観察され, 精細管蠕動運動との関連性が強く推測された. (3) 細胞内染色法に成功し, その組織学的同定については, 更に検討を要するが, セルトリ細胞の可能性が高いと思われた.

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