日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
尿路性器悪性腫瘍患者の免疫能に関する研究
第1編 遅延型皮膚反応およびリンパ球幼若化反応による免疫能の検討
小野 浩
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1981 年 72 巻 8 号 p. 1064-1077

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抄録

尿路性器癌患者の非特異的免疫能を, PPDおよびDNCBに対する皮膚反応, PHAおよびPWMによる末梢リンパ球幼若化反応で観察し, 各パラメーター間の相関を検討し以下の成績を得た. 1) 尿路性器癌患者の皮膚反応は低下しており, 病期の進行につれてその低下は著明となる. 2) DNCBとPPDとに対する反応性の差から癌患者における免疫反応の afferent limb の障害が示唆された. 3) 尿路性器癌患者のPHAによるリンパ球反応は有意に低下しており, 病期の進展につれてその低下は著明となる. また尿路性器癌患者の血清は自己リンパ球および健康人リンパ球のPHAに対する反応を抑制し, この抑制は病期の進展につれて著明に認められた. これらのことより癌患者における免疫能の低下はリンパ球自体の陣害と血し清中の抑制因子の両者による可能性が考えられた. 4) 尿路性器癌患者のPWMによるリンパ球反応は低下しているが, PHAによる反応ほど明確ではなく, その反応は癌患者自己血清によつて抑制を受けなかつた. 5) 尿路性器癌患者ではPPDおよびDNCB皮膚反応の低下にともない, PHAおよびPWMによるリンパ球反応の有意の低下が認められた.

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