日本泌尿器科學會雑誌
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ヒト前立腺の組織化学
第II報 肥大症, 癌における電顕およびXMAによる亜鉛の局在
森田 博人
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1981 年 72 巻 6 号 p. 717-729

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抄録

生体内における微量重金属のうち亜鉛が特に前立腺に多く含まれているということはよく知られている. しかし, その生理学的機能については未だ充分に解明されてはいない.
本研究の目的は前立腺肥大症, および癌について硫化銀法を用いて電顕的に組織内亜鉛の局在を観察するとともに, X線微小部分析法 (XMA) にて直接的に亜鉛の局在を証明することにある.
試料は硫化水素飽和2%グルタールアルデヒド固定を行ない, Timm の硫化銀法にて現像を行なつた. また, 現像, 未現像の試料においてエネルギー分散型XMAを行なつた.
電顕的観察において, 現像を行なつた試料では前立腺肥大症の分泌空胞に銀粒子を認め, 核, ライソゾーム, ゴルジ装置, 他の細胞小器官では認められなかつた. 前立腺癌では極くわずかに同様の部位に銀粒子の沈着を認めた.
XMAにおいては, 現像を行なつた試料では分泌空胞にAg, Sのピークを認め, 未現像の試料では分泌空胞の電子密度の高い部分においてZnのKαとLαのピークを認め, 前立腺内における亜鉛の局在を直接的に証明することができた.

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