日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
経尿道的超音波断層法の開発と膀胱への臨床応用
中村 昌平
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 72 巻 5 号 p. 511-529

詳細
抄録

膀胱腫瘍の浸潤度診断を主たる目的として, 経尿道的超音波断層法の開発を行なつた. 走査法の簡易化, 断層像の質的向上, 死角となる部位の除去を図り, その実用的な臨床応用に到ることができた. 本法を67例の膀胱腫瘍症例に応用した結果は以下の如くであつた. (1) 67例のうち, 膀胱頚部に腫瘍の存在した3例を除き有効な断層像が得られた. (2) 断層像のうえで膀胱筋層像の表層および深層の推定が可能で, 粘膜浮腫像の描出や腫瘍基底部の同定ができるため, 浸潤度の判定を病理学的な診断基準と同様の基準によつて行なうことができた. この読影法による所見を治療により形態的な修飾をうけなかつた17例での膀胱全層病理標本と対比検討したところ, 両者は形態的によく相関し, 浸潤度の所見も1例を除いて一致した. (3) 腫瘍の断層像は症例によつて極めて持徴的な形態が認められ, これを8種に分類した. この所見も浸潤度判定の有力な手がかりとなるもので, (2) で示した診断基準を補足する補助的な診断所見として示した. これらの診断基準や補助的診断所見による浸潤度判定は, 切除標本で病理学的な浸潤度を判定し得た58例中54例で一致をみた. 本走査法はこれまで組織レベルで検討されていた腫瘍基底部の形態や, 腫瘍と膀胱壁との相互関係を臨床的に知り得る手段としての意義がある.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
次の記事
feedback
Top