日本海洋学会誌
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1958年初夏の干天によつて生じた利根川下流域の異変現象について
石野 誠
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1960 年 16 巻 4 号 p. 157-162

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抄録

1. 昭和33年3月以降, 利根川下流域で, 河水中の塩分増加が目立ち, 淡水魚貝の発死や逸散が生じた。河口より約27km上流で,淡水と外洋水の混合割合は相半ばし, この附近までアジ, サバ, カタクチイワシの遡河がみられた。外洋水の影響は落潮時でさえも大略45km上流にまで及んでいた。
2. 上記の現象は,外洋水の逆流が招来したのであるが, 上流を含めた流域一帯が, 長期間にわたり特に2月~5月にかけての降水量が少なく, 干天続きであつたことと, 本系水の大量消費のために, 河川流量が極度に減少したことが主因であつたようである。
3. 更に利根川治水工事による河床の低下, 外洋荒天による河水位の上昇などのため, 外洋水の河川への流入が促進されたのであろうと思われる。

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