海の研究
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原著論文
統計的手法を用いた黒潮流路変動解析
吉田 次郎 前田 恵理子中野 知香出口 大貴根本 雅生
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2014 年 23 巻 5 号 p. 171-196

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抄録

日本南岸の黒潮流路は代表的な3流路(典型的大蛇行流路: tLM,非大蛇行接岸流路: nNLM,非大蛇行離岸流路: oNLM)に区分されてきた。本研究では日本南岸の潮位データ,並びに,黒潮流軸データセットを用い,1970年1月から2009年12月までの黒潮流路を統計的手法である,マハラノビス距離を用いた判別分析とK-mean法を用いた非階層型クラスター解析により分類した。黒潮流路の指標として南限緯度(東経136度-142度間)と北限緯度(東経136度-140度間)を算出し,大蛇行西偏流路 (LMW),非大蛇行北偏流路 (NLMN),非大蛇行南偏流路(NLMS)に加えて,南限緯度が北緯32度以南を示す大蛇行東偏流路(LME)の4つに分類できた。LMWはtLMに対応し,NLMNはnNLMに対応するものであるが,LMEは北緯32度以南まで達しているという面ではLMWと類似し,八丈島の南を通過しているかという面ではNLMSと類似していた。しかしながら,八丈島の潮位,並びに串本以西でも低潮位の傾向を示したことから,LMEはoNLMに隠されていた4つ目の流路と判断された。本研究によって,LMEの流路が区分されたことにより,NLMNからLMWとなり,大蛇行が形成され,LMWが北東に偏することによりLMEを形成し,さらに北上しNLMS,そしてNLMNとなり大蛇行が消滅するに至ることが示された。

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© 2014 日本海洋学会
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