教育心理学研究
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幼児における単語の読みの学習
杉村 健
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1974 年 22 巻 4 号 p. 238-242

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抄録

幼児が単語の読みを学習する際に, 単語のみを示す場合と単語とその絵をいっしょに示す場合のどちらがよいかを, 片仮名と漢字を用いて検討した。
被験者は学習に用いる6つの単語が全く読めない幼児で, 片仮名群, 漢字群, 片仮名+絵群, 漢字+絵群の4 群からなっている。学習試行では, 単語のみか単語と絵を1つずつ示しながら, 実験者がその読みの音を発し, それを被験者に模倣させた。テスト試行では, 単語のみを示して被験者に読ませた。学習2試行とテスト1試行を5回くり返し, 1週間あとで把持の測定を行なった。
正答は絵のない群が絵のある群よりも多く, その差は試行が進むにつれて増大した。把持でも絵のない群が多かった。この結果について, 絵が単語から注意をそらす刺激になること, 絵が単語と読みの音との連合を抑制すること, および絵のある群では学習とテストで場面が変化することの3点から考察した。
リスト内侵入は漢字の群が片仮名の群よりも多く, 試行の増加にともなって絵のない群では減少し, 絵のある群では増加する傾向があった。この結果は, 単語と単語の間の形態的弁別が片仮名よりも漢字において困難であること, およびテストにおいて絵の手がかりが失われるので, 単語間の弁別可能性が減少することによると考えた。

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© 日本教育心理学会
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