2020 年 62 巻 4 号 p. 515-524
地中熱利用への関心の高まりに対し,設備導入件数が伸び悩む現状の課題に依然コスト削減があるとし,近年の研究動向を踏まえた地下水学からの解決アプローチを論じた。クローズドループシステムでは熱移流を考慮した地中熱交換器規模の削減を挙げ,このための設計性能予測ツール,設計に必要な地下水流速のデータベースや原位置試験法を紹介した。オープンループシステムは,帯水層蓄熱に対する規制緩和の動きから今後導入拡大が期待される中,井戸の目詰まりリスク等の導入指標とその評価法の確立,設計に用いる帯水層データベース構築を課題とした。最後に海外先進事例を紹介し,わが国の地下水資源を活かす積極的な地中熱利用への期待を述べた。