ブレオマイシン (BLM) の術前使用によつて手術根治性の向上が期待されるが, BLM療法の重篤な合併症として肺線維症がある. とくに, 食道癌は高齢者に多発し, しかも食道癌術後には肺合併症が発生しやすく, BLMの術前の使用が躊躇される. また術中に撒布されるか取り残された癌細胞を撲滅するためには術中・術後の投与が望ましいが, 一部の制癌剤には創治癒障害がみられ, 縫合不全発生の危険が懸念される. このような観点から, 犬の頚部食道を利用しBLMの創治癒に及ぼす影響をbursting strengthの測定および病理組織の面から検討した. その結果, BLMの創治癒に及ぼす影響はみられなかつた.