日本消化器外科学会雑誌
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原著
胃十二指腸潰瘍穿孔に対する腹腔鏡下手術適応の限界に関する後ろ向き研究
京兼 隆典弥政 晋輔澤崎 直規東島 由一郎後藤 秀成大城 泰平渡邉 博行田中 征洋高木 健裕松田 眞佐男
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2010 年 43 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

 はじめに:胃十二指腸潰瘍穿孔に対する腹腔鏡下手術の限界は明確ではない.腹腔鏡下手術の成功例と後日開腹を必要とした開腹移行例の比較から,腹腔鏡下手術の適応の限界を明確にすることを目的とした.方法:2000年1月から2008年3月までに,当院で腹腔鏡下手術を行った胃十二指腸潰瘍穿孔64例を対象とし,これらを後日開腹術を必要とした開腹移行例(A群)5例,腹腔鏡手術成功例(B群)48例,術中開腹移行した症例(C群)11例に分け,比較検討した.結果:A,B群間の比較では,年齢,性,穿孔部位,腹部理学的所見,体温,発症から受診までの時間,白血球数,血清CRP値,いずれも有意差はなかった.術前腹部CTで肝周囲腹水15 mm以上の症例は全例A群で,差は有意であった.10 mm以上,かつ骨盤内に腹水貯留を認める症例は有意にA群に多かった.また,穿孔径が10 mmを超える症例は有意にA群に多く,15 mmを超える症例はA群にのみ存在した.術後経過に関する検討では,C群はA群と異なり,合併症発生率,食事再開までの期間,術後在院日数,すべてB群と有意差はなかった.考察:術前腹部CTによる腹水の量と広がり,穿孔径が,腹腔鏡下手術を行った場合の治療困難予測因子と考えられた.これらの因子を参考に,開腹するかどうかの判断は,術前あるいは腹腔鏡下手術中に行うことが良好な術後経過につながるものと考えられた.

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