2008 年 41 巻 3 号 p. 299-304
症例は63歳の男性で, 上腹部痛を主訴に来院された. 上部消化管造影検査と内視鏡検査にて胃体下部に3型腫瘍を認めた. また, 腹部造影CTと腹部超音波検査にて肝S4に30mm大の肝転移を認めた. 単発性肝転移を伴う進行胃癌の診断にて術前化学療法を施行した. TS-1 100mg/body/dayを3週投与2週休薬, CPT-11は80mg/bodyを第1日目と15日目に点滴静注し, これを1コースとした. 2コースを終了後, 肝転移巣の著明な縮小を確認し, 開腹手術を行った.術中超音波検査にて肝転移巣は確認されず, 幽門側胃切除術, 胆.摘出術, リンパ節郭清D2+α, R-Y再建を施行した. 術後補助化学療法としてTS-1を1年間継続し, 術後3年経過した現在無再発生存中である. 同時性肝転移を伴う進行胃癌は肝病変が切除可能であれば, まず外科的治療が優先されることが多い. しかし, 本症例は術前化学療法が有効である可能性を示唆した.