症例は78歳の男性で, 肝左葉に径16cm大の嚢胞を認めていたが無症状であったため経過観察されていた. 2005年12月末, 心窩部痛を主訴に受診した. 腹部X線検査, CTで肝嚢胞内にガス像があり, 嚢胞に接する胃壁は肥厚していた. 腹膜刺激症状を認めたため, 緊急手術を施行した. 肝嚢胞と胃壁は強固に癒着し, 自動縫合器による切離と肝嚢胞内ドレナージ術を施行した. 術後の上部消化管内視鏡検査で胃潰瘍の穿通と診断した. 術後よりプロトンポンプ阻害剤を投与した. 術後経過良好であり第21病日に退院となった. 術後6か月肝嚢胞の再発は認めない. 有症状の肝嚢胞は5~10%との報告があるが胃潰瘍が肝嚢胞内に穿通することはまれであり, 若干の文献的考察を加えて報告する.