日本消化器外科学会雑誌
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特発性食道破裂術後20年目に発生した胸部食道癌の1手術例
鈴木 聡三科 武二瓶 幸栄平野 謙一郎渡邊 真実渡邊 マヤ松原 要一
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2005 年 38 巻 3 号 p. 300-305

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抄録

特発性食道破裂は比較的まれな疾患であるが, さらに本疾患の術後に異時性に, しかも破裂部位に食道癌が発生することは極めてまれである. われわれは, 特発性食道破裂術後20年目に破裂部位に一致して進行食道癌が発生した1 例を経験したので報告する. 症例は60歳の男性で, 20年前に胸部下部食道左壁の食道破裂に対し, 穿孔部単純縫合閉鎖術を施行されたが, 縫合不全を合併した. 術後20年目の2001年10月, 食道破裂部に一致して発生した食道癌の診断をうけた. 食道透視では左気管支 (B10) との瘻孔を認めたが, 切除標本の病理学的検索では, 気管支および瘻孔には癌細胞を認めなかった. 食道破裂術後の縫合不全に端を発し, 気管支との瘻孔を形成するなど, 長期間の慢性炎症が食道粘膜の悪性変化を来したものと想像された. 特発性食道破裂は, 食道癌発生のリスクファクターになる可能性があり, 術後長期間におよぶフォローアップが必要である.

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