1995 年 28 巻 10 号 p. 2047-2051
胸部食道癌根治手術例で右開胸開腹, 頸部吻合, 胸骨後あるいは後縦隔経路再建の285例を対象とし, 再建術後の問題点と対策を検討した. 反回神経リンパ郭清を行わなかった1982以前の88例 (First Gr.) と, それ以降の197例 (Latter Gr.) の, 非再発死亡と再発例の生存率では, First Gr.で非再発死亡の生存率が再発例より有意に良好であった. しかし, Latter Gr.ではその有意差は消失し, 非再発死亡の66.7% (30/45例) は肺炎, 全身衰弱, 突然死であった. Latter Gr.の胸骨後再建80例と後縦隔再建117例では, 退院時の体重, 肺活量, 1秒量は後縦隔経路で有意にその落ち込みが少なく, 退院後3年の体重も良好に維持された. 術後3~5年経過例のアンケート結果でも後縦隔再建例で食物のつかえ感や誤飲, 腹痛, 息切れを訴える症例が少なかった. 消化器・呼吸器症状が少なく, 術後長期の栄養状態も良好な後縦隔経路は, 食道癌根治手術におけるfirst choiceの再建経路と考えられる.