日本消化器外科学会雑誌
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実験的術後Methicilline耐性黄色ブドウ球菌腸炎の検討
川井 邦彦
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1994 年 27 巻 4 号 p. 876-883

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抄録

ラットを用い, Methicilline耐性黄色ブドウ球菌 (以下, MRSAと略記) 生菌を腸管内に接種し, MRSA腸炎発症誘因の解明と全身感染症への移行経路の解明を目的に実験検討した. MRSA腸炎は胃切除後に多く, 抗菌剤投与で腸内細菌叢が変化した状態に起こりやすいとされている. そこで, 抗菌剤投与群と非投与群, 胃切除群と非切除群に分け比較検討した. 胃切除前Kanamycin, Metronidazole投与群では, MRSA接種1日目より便中にMRSAが106CFU/g検出され, 非投与群では, MRSA接種4日目までは102CFU/g, 5日目から105CFU/g検出され, 前老が有意に多かった. 術後Latamoxef非投与群では接種したMRSAは増殖しなかった. MRSA接種前後の抗菌剤投与下で胃切除群と非切除群の便中MRSA菌数の比較では前者が有意に多かった. MRSAの臓器内移行をみると, まず肝臓からMRSAが検出され, 腸管内のMRSAが腸管壁から門脈, 肝臓を経由し, 全身感染を引き起こすことが示唆された.

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