膵臓の脂肪浸潤は一般的にはびまん性に生ずるといわれており, 同様の変化が限局性に生ずることは極めてまれで, 現在までに3例の報告があるにすぎない. われわれは超音波検査にて発見し外科的治療を加えた膵臓の限局性脂肪置換の1例を経験したので報告する.
症例は39歳, 女性で, 背部痛を主訴に入院した. 超音波検査にて膵体部に直径0.7cmの高エコーレベルの腫瘤陰影を認め, また, computed tomography検査では同部位に造影にて濃染しない低吸収域を認めた. 腫瘤核出術を施行したが, 摘出標本は, 球状, 弾性軟で, 黄色を呈していた. 病理組織学的には大部分が成熟した脂肪組織で構成されていたが, 内部には膵実質組織が島状に残存しており, 膵臓の限局性脂肪置換と診断した.
近年, 画像診断の発達に伴い膵腫瘤を発見する機会が増加しているが, 本症のごとき病態の存在にも留意し, 診断, 治療を進めるべきである.