日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
膵臓の限局性脂肪置換の1例
笹田 哲朗高林 有道佐藤 友信宮岡 哲郎牧 淳彦白潟 義晴山本 寛水本 雅己武内 勝美
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 25 巻 9 号 p. 2407-2411

詳細
抄録

膵臓の脂肪浸潤は一般的にはびまん性に生ずるといわれており, 同様の変化が限局性に生ずることは極めてまれで, 現在までに3例の報告があるにすぎない. われわれは超音波検査にて発見し外科的治療を加えた膵臓の限局性脂肪置換の1例を経験したので報告する.
症例は39歳, 女性で, 背部痛を主訴に入院した. 超音波検査にて膵体部に直径0.7cmの高エコーレベルの腫瘤陰影を認め, また, computed tomography検査では同部位に造影にて濃染しない低吸収域を認めた. 腫瘤核出術を施行したが, 摘出標本は, 球状, 弾性軟で, 黄色を呈していた. 病理組織学的には大部分が成熟した脂肪組織で構成されていたが, 内部には膵実質組織が島状に残存しており, 膵臓の限局性脂肪置換と診断した.
近年, 画像診断の発達に伴い膵腫瘤を発見する機会が増加しているが, 本症のごとき病態の存在にも留意し, 診断, 治療を進めるべきである.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top