2024 年 57 巻 1 号 p. 10-17
症例は84歳の女性で,増大傾向を認める胃体中部大彎の腫瘤性病変の治療目的に紹介された.内視鏡検査では,周辺粘膜との境界が不明瞭な周堤を伴い,中心に深い潰瘍を有する腫瘤性病変を認め,造影CTではリンパ節や遠隔転移などの他臓器病変の所見は見られなかった.PET-CTでは病変部に異常集積を認めた.術前に組織生検での診断は得られなかったものの悪性疾患の可能性が高いと判断し,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的検査で粘膜下層と固有筋層に限局する胃形質細胞腫と診断し,リンパ節転移は認めなかった.術後補助化学療法は行わずに経過観察を行い,術後5年以上経過し無再発で生存中である.