2024 年 57 巻 2 号 p. 82-91
症例は58歳の女性で,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術,小腸動静脈奇形に対し腹腔鏡補助下小腸部分切除術施行後であった.経過観察中の胸腹部造影CTで膵尾部に辺縁が濃染される径19 mmの低吸収腫瘤を認めた.造影MRIでも同部位に腫瘤を認め,辺縁が漸増性に増強され,隔壁様構造も疑われた.膵神経内分泌腫瘍疑いの術前診断で,腹腔鏡下脾臓温存膵体尾部切除術を施行した.術後経過は良好だった.病理組織学的検査では,腫瘤に一致した脾臓組織および内部に重層扁平上皮様の上皮に被覆された囊胞を認め,膵内副脾に発生した上皮囊胞と診断された.膵内副脾に発生した上皮囊胞は比較的まれな疾患であり,診断に苦慮することが多い.一方で,幽門側胃切除後に膵体尾部切除を施行する際は残胃の血流に注意する必要がある.今回,幽門側胃切除後の膵内副脾に発生した上皮囊胞に対し,腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した症例を経験したため報告する.