2021 年 54 巻 8 号 p. 571-578
症例は64歳の女性で,下部直腸の神経内分泌腫瘍に対して内視鏡的切除が施行されたが,組織学的に垂直断端陽性と脈管侵襲を認め,追加切除として腹腔鏡下括約筋間直腸切除術(回腸人工肛門造設を併施)を施行した.術後3か月目,回腸人工肛門閉鎖に際しての直腸造影検査で膣が造影され,直腸膣瘻と診断した.可及的に腰椎麻酔下に瘻孔の単純縫合閉鎖術を行ったが,直腸膣瘻の再発を認めた.膣瘻の根治を目的として,初回手術後7か月目に内陰部動脈穿通枝皮弁充填術を施行した.術後経過良好にて術後9日目に退院となった.皮弁充填術後6か月目に回腸人工肛門を閉鎖し,術後16か月時点で腫瘍・瘻孔の再発を認めていない.直腸切除後の膣瘻に対してはさまざまな治療の報告があるが,内陰部動脈穿通枝皮弁充填術の報告は比較的少ない.今回,我々は内陰部動脈穿通枝皮弁充填術により括約筋間直腸切除後の直腸膣瘻を根治しえた1例を経験したので報告する.