2018 年 51 巻 10 号 p. 622-630
症例は85歳の女性で,冠動脈精査目的に行ったCTで発見された胆囊癌に対して肝S4aS5区域切除術(D2郭清)を施行し,乳頭腺癌 pT2 N1 M0 stage IIと診断された.術後1.5年のfollow up CTで総胆管内に乳頭状の隆起性病変を指摘され,生検で前回手術検体の組織像に類似した異型細胞の乳頭状増殖を認めたため,胆囊癌の再発疑いとして幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(D2郭清)を施行した.切除検体では数珠状に多発する乳頭状腫瘍を認め,腫瘍間には正常粘膜が介在していた.病理組織学的検査では異型円柱上皮が乳頭状に増殖し,乳頭腺癌pT1 N0 M0,stage IAと診断された.肝外胆管に同時多発性に発癌した報告は比較的まれではあるが,同時多発の可能性を念頭に置いた術前術中の注意深い診断や治療戦略の決定が必要である.